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脱法立ち食いそば

 脱法って頭につけるとなんでも怪しくなるよ。

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 今日携帯のメモ帳に書いた文三つ。

・優しさは大きくなりますか
・好きですって言葉が挨拶みたいに見えだしたら一度立ち止まる
・口の中火傷しながら食う立ち食いそば

 以上3つのことをテーマにしてちょっとだけ書こうと思う。



『優しさは大きくなりますか』

 今日は仕事だったのだけれど、日曜日はあまりやることがなくて作業部屋に一人なもんだから伏田、パイプ椅子を三つ並べて寝ていた。
 ちゃんとアラームをかけて寝たので、仕事に支障はない。
 態度は最悪だけれど誰も見ていないので問題もない。
 極端なことを言えば日曜日、全裸でブレイクダンス踊っていても全く問題ではない。どんだけロックな職場だよ。
 むしろ問題になるのは「暇」の方で、これが人の心を蝕むのは皆さんご存知のことと思う。
 基本的に暇というのは脳にとってストレスなのである。脳は新しい刺激を求めるように設定されているからだ。
 更に「仕事中」という状況は常識や職業意識や倫理にかかるステータスのため「自由」がある程度束縛される。これもストレスになる。
 ということで暇というのは割と強めの敵なのだけれど、伏田はこれに耐性がある。
 伊達に地蔵を名乗っていない。
 ぼうっとしているだけで二時間くらいは余裕で過ごせる。
 伏田はスマホがあれば潰せない暇はないと豪語している。
 そんな伏田は椅子を並べて狭い面積に器用に寝ている。
 寝ながら考えている。
 優しさというのは、練習や訓練で大きくなるものだろうか。
 それとも生来授かった器以上のものにはならないのだろうか。
 優しさって忍耐だろうか。
「伏田って怒らないから優しいよな」
 腹の中で復讐を誓っていても優しいのだろうか。
 諦めは優しさだろうか。
「お前のお菓子食べちゃった。ごめんごめん。すぐ許してくれる伏田は優しいな」
 無いものねだりをしたくないだけの面倒臭さは優しさだろうか。
 優しさという言葉を他の言葉に置換することが可能だと気がついてしまった今の伏田は割と優しくはないかもしれない。
 でも、優しくはないかもしれないと正直に書いておくことは、やはり優しさかもしれない。



『好きですって言葉が挨拶みたいに見えだしたら一度立ち止まる』

 人に好意を告げるのは勇気と信頼とそこそこのカロリーを使うってことを忘れがちだ。
 好きだと言ってくれる人達に何が出来るかと考えると絶望的だ。
 でもそれが真偽しかないみたいな、まっすぐな型だと考えたらありがとうだ。
 特に何かを返したりしなくていいはずだ。
 礼を失さない程度に、いつも自然でいればいいのだ。
 強度を気にすると穴二つ。試そうとするのも必ず怪我をする。
 強すぎる好意は反転することがあるので注意すること。
 落とし穴というのは誰も気づかないから落とし穴なのだった。



『口の中火傷しながら食う立ち食いそば』

 退社してから街をぶらついていた。
 会社がある街はオシャレで小奇麗な街で、伏田が今まで経験してきたゴミ溜めみたいな場所とは全然違っていた。
 だからあんまり馴染めていなかった。
 街を見て回ろうなんて滅多に考えない。面白い場所が特になさそうだからだ。
 唯一好きなのが、狭くて小汚くて古ぼけた立ち食いそば屋なのだけれど、今日はそこに行ってきた。
 460円払うと、そばに「乗せるモノ」を二つ選ばせてくれるそば屋だ。
 厨房の奥に宝石のように並んだかき揚げ、ちくわ、とろろ、たまご、ハム天、きつね、あげ玉……銀色のバットの上で輝いているよ。
「兄ちゃんそば?」
「うん、そば」
「あい」
 このキレのある会話。必要最小限のやりとり。素敵だ。
「あとねえ、ハムときつね」
「あい」
 しばらく待つと、いい匂いのお蕎麦がやってくる。
 以下、超絶文体芸。

 きりりと引き締まった渋いおそばは、侍のように無表情だったけれど信頼できそうだ。
 薄くスライスしたねぎは新鮮で、つゆの上を優雅に漂っている。
 丼の大半を占めるふかふかの油揚げは、目にしただけで幸福になってしまうくらいしっとりと優しく微笑んでいた。
 ほどけかけた衣をまとった丸ハムとは初対面だ。少し緊張しながら見つめ合っていると、やんちゃな彼が笑いかけてくれた。どうやら長い付き合いになりそうだ。

 表現タイム終わり。
 そばをずずっと食べていたら、最初は伏田ひとりしかいなかったのにお客さんが入り始めて店が狭くなってきた。
 急いでそばを食うけれど、もともと食べるのが遅いのでなかなか進まない。
 しまいには口の中をやけどしてイタイイタイ状態になって店を出た。
 通い慣れた見知らぬ街を歩きながら、急いで食べる立ち食いそばっていいなと思った。


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