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種田さんへ何かを込めて

 わが日本国には俳句という文化がある。

 "古い池に蛙が飛び込んで水の音がした"

 というあれである。
 俳句というのは五音七音五音の音数に合わせて言葉を並べなくてはならない。
 更に季語という厄介なやつを使わないとルール違反になって市中引き回しの上打ち首獄門である。

 さて、ここまでは常識であるけれど、季語がいらない俳句があるのをご存知だろうか。
 無季俳句というジャンルだ。
 ぼくの好きな渡辺白泉さんの無季俳句を一つご紹介したい。

 "戦争が廊下の奥に立つてゐた"

 季語は無いけれど、五七五のルールは守られている。
 無季俳句の他のルールはよくわからないが、ぼくはこの句が凄く好きだ。
 はじめて読んだ時は心底ぞっとした。
 光景なんかこれっぽっちも目に浮かばなかった。戦争はモノじゃないからだ。
 ただこの作者の異様な感性に思いっきりぶっ飛ばされた。
 たとえば普通の人なら「廊下には血に泳ぎたる人の群れ」とかなんとか、そんな風に書いて戦争を表現するんじゃないだろうか。(今適当に考えたので残念な例ですみません)
 でもこの渡辺さんは戦争がまるで一個のモノであるかのように廊下の奥に立たせた。
 立っているということは、それは人なのかもしれない。
 どんな人だろうか、兵隊か、それとも腸を抱えた看護婦か、あるいは何かの列が出来ていたのか、それは書いてないからわからない。
 わからないから、想像してしまう。
 読んでいる人が一番イメージしやすい戦争の形をそこに見るはずだ。
 ぼくは最初にぶっ飛ばされてから二度三度と読んで、古い木造の学校の廊下を想像した。けが人がたくさん運び込まれていて廊下の壁によりかかってうめいているところで、そこに腕のかけた女の人が一人たっていて、目があってしまったところだ。

 無季俳句は季語は無かったけれど、五七五は守られていた。
 けれどこの世界には、より無茶苦茶なことをやる連中がいて、それが自由律俳句というものを作った。
 ぼくがとても好きな種田山頭火という人を紹介したい。
 この人は国語の教科書にも出てくる有名な人なので、知っている人もいるかもしれない。

 "まっすぐな道でさみしい"

 季語なんてもちろんない。
 その上、五七五でもない。
 ただぽつりと呟いたような一文だ。
 それでもやっぱりこれが最強の文章表現なんじゃないかと思う。
 ヘミングウェイが作った氷山の理論をさらに凝縮したようなたった一言の詩。
 ああ種田さん。
 まっすぐな道って、さみしいね。
 って話したくなる。
 種田山頭火の作品はとにかくストレートで暖かくて格好つけてない。
 もう一句紹介させてください。

 "何が何やらみんな咲いてゐる"

 こんなに共感できる作品が他にありますか!?
 いっぱい花が咲いてるところに突然来てしまったとき、
「うわーなんかすげー咲いてるなあ」って言うでしょう!
 それを作品にしようとしたとき欲が出るんですよ!
 きれいに見せたいとか、上手く見えるようにしたいとか、色がたくさんあるから表現したいとか、それ全部欲! 無駄! 蛇足! 
 何だか分からない花の名前をいちいちググって知ったかぶるなんて愚の骨頂!(ぼくはよくやります)
 "何が何やらみんな咲いてゐる"でいいじゃんね、種田さん。
 それで良かったんだ。
 なんかわかんないけど超スゲー! って言う、その本音こそが、その嬉しさこそが、そのストレートさこそを書かなくてはいけないんだよね種田さん!!!!
 種田さん好きだッ!!(興奮してきた)
 
 あとの種田さんの作品は青空文庫というところでほとんど全部読めると思います。
 種田さんは昔の作家さんなので著作権が切れた作品を有志がデジタル化しているのです。
 もちろん本も売っています。
 句集は「草木塔」というヤツが有名ですので、読んでみてください。
 合わせて種田さんの友人であり、こちらも最近随分名前が知られてきた尾崎放哉さんという俳人の句集を読むこともおすすめします。
 なんというか、種田さんが尾崎さんの句をパロって書いた句とかがあって笑えます。
 仲いいなあという感じで、微笑ましいです。
 でも尾崎さんは種田さんより優しくないので、ちょっと孤独な句が多いです。

 最後に、我々の世代でもっとも有名になってしまったであろう自由律俳句の俳人であるピースの又吉直樹さんの一句で終わりにしましょう。

 "カキフライが無いなら来なかった"

 ぼくはすこし笑ってしまいます。
 なんとなくだけれど、従兄弟の家の夕食に呼ばれたんじゃないかなあと想像してます。
 いとこと遊んでいて、夕食食べて行きなさいといとこのお母さんに言われて帰ろうとしたんだけれど「今日カキフライだよ」って言われて、別に好きでもないけど、じゃあ……って招かれたら、いとこの勘違いでカキフライじゃなくてかぼちゃコロッケでね、なんかちょっと違うし、しかもいとこも自分が間違ったこと言っちゃったもんだから誤魔化そうとしてちょっと機嫌悪くなってるし、いとこの親には気を遣うし……っていうのを想像してます。

 さて、とても浅い俳句話ではございましたが、おつきあい頂きまして、まことにありがとうございました!

 画面から目が離せない書いた後   伏田
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