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ソドサデライネ

 暑いのと寒いのとどちらが好きですか?
 と聞かれたら僕は、暑いのと答えるだろう。

 暑いのと寒いのとどちらが嫌いですか?
 と聞かれたら僕は、暑いのと答えるだろう。

 暑さは、良きにつけ悪しきにつけ印象が強すぎる。
 エネルギーの総量が多すぎる。
 悪いことではない。
 木曜日は夜勤で、明けて金曜、Mとメシを食いに行った。
 とても美味いものを食べたが、会社からメシヤまで歩いた30分は地獄だった。
 携帯で気温を確認したら33℃。
 たぶん都心だけで考えたらそれ以上あると思われた。
 車の排気ガスやエアコンの室外機から発せられる温風、地表面被膜の人工化が、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こしている。
 道行く人々もだらりと口を開けて汗を拭って歩いている。誰もかれも暑い。
 現場作業中の男性が白いバリケードの向こうから空調服を着て出てきた。空気が満ちた服はパンパンに膨らんでいる。涼しそうなので僕も欲しいと思った。家に帰ってからどれくらい効果があるのか調べてみたら「体感気温マイナス2℃」という広告文をみつけた。マイナス2℃なら気温33℃の時31℃ってことだ。あまり涼しくならなそうなので買うのはやめた。ファンから虫やゴミを吸い込むこともあるそうだし、便利なことばかりではない。

 Mと別れたあと地元に戻ってきてSくんとSくんの子供のNくんと遊んだ。
 三人で温泉に行った。
 夕方待ち合わせて、無料送迎バスに乗ってぶらぶら向かったのだが、Nくんがバスの中でめちゃくちゃ騒いだので、というか声がでかいので、Sくんも大変そうだった。
 Nくんはハナクソの話やちんちんが破裂する話しや、お話しのゴミ捨て場の話しなどをしていてエキセントリックでアヴァンギャルドだった。時々は意味のわからない「ぬわいるれいとほうてぃーぷ……」という言葉を連続で放っていた。聞き返しても、彼自信何を言っているのかわからないようだった。ようぐそうとほうとふ。クトゥルフからの何かを受信しているのではないかと思われた。

 温泉に入りながらSくんと最近どうだいという話をした。
 陽射しが弱まってきた夕方の温泉は、今までとは違う趣があってとても良かった。
 風呂から上がって牛乳を飲んだ。
 脱衣場からNくんが僕を呼ぶ声がずっと聞こえていた。
「竜一ちゃん! 竜一ちゃん!」
 よくあることだった。慌てて走っていくようなことでもない。ただ単に僕が好かれているというだけの話だ。
 Nくんは5歳。まだ自分の好き嫌いを把握できていないし、自我というのもあるんだかないんだか分からない時期だ。そういう子供は親が好きなのものを好きになる。だからNくんが好きな人というのは結局のところSくんが好きな人なのだ。
 Sくんが僕と一緒にいるといつもよりよく笑うとか、SくんがNくんをいつもより叱らなくなるとか、それだけの理由で僕を好きだと思っている、ということを僕はよくわかっているつもりなのだ。子供は親が思っているよりもずっと親や大人のことを観察している。
 彼が小学生になるとまた人間関係は大きく変わる。今は僕の顔を見ると喜んで走ってくる彼も、恥の概念を覚えたり、人の目を気にして大声でちんちんの話とかをしなくなるだろう。それはそれでつまらないのだが、間違いなく人間としては成熟しているので喜ばしいことなんだけれど、まあなんだろうか、幸せに生きてくれれば僕のことなんてどうでもいいに違いない。
 ずっと前に会っているはずのTのことなんてもうすっかり忘れているだろう。
 そのことでTがショックを受けなければいいんだけれど。
 誰かに好かれたいとか、覚えていてほしいとか、それは正しい欲求のはずなのに、その気持ち自体が計算だとか本心じゃないとか、そういう風に言われることがまあまああるのは悲しいことだなと思う。キャバクラの話しでもある。キャバクラに行ったことないけど。

 温泉から帰ってきて、地元の居酒屋でちょっと飲んだ。
 Sくんはまた九州に帰る。そのことにはNくんも慣れてしまっているようだった。
 Sくんが誕生日プレゼントだと言って居酒屋を全部出してくれて、コンビニでおにごろしを二本買ってくれた。おにごろし。かつての僕の代名詞であった。中二病っぽく聞こえたら面白い。
 僕はかつて鬼殺しと呼ばれていた。嘘です。
 だからおにごろしは僕にとってまあまあ黒歴史な酒である。

 家に帰ってから煙草を吸ってちょっと考えた。
 NくんとMはとても似ているということだ。
 これをMに伝えると多少ショックを受けるかもしれないが、たぶんその後で笑うだろう。
 Mは子供っぽいんだなとはっきりと明確に理解した。もちろんそれが悪いという意味ではない。悪い意味だったら僕はMに近づかない。
 Mは僕と二人きりで仕事をしている時いきなり叫ぶことがある。
 うまく再現できないけど、
「お前我慢してたんだなぁM~~ずっと我慢してたんだなぁ~~!」
 とか変な声で叫ぶんである。
 唐突にだ。
 もちろんギャグなんだろうけど、その唐突に変なことを叫ぶ芸風、あるいは叫んじゃう衝動はNくんのハナクソちんちんと全く同じ動機であると思う。
 Nくんが意味の分からないことを叫ぶのも、Mが叫びながら変なポーズをとるのも同じだ、ということに気がついた僕は、なんというか、やはり「人間には絶対に変化しない部分」があるんだなと思ったし「人間が共通して持っている衝動」みたいなものにもひとつ、気づいた気がした。

 さて今日は最高気温36℃。
 休日だがちょっと外に出る気がしない。
 アニメを見て過ごした。


 レキシのニューシングルの『GET A NOTE』が本気でいい曲過ぎてItuneてそっこう買おうとしたらまだ発売日前だった。
 夏っぽくて切なくて奇跡みたいな曲調で歌詞も笑えてPVも良かった。
 出たら買おうと思う。
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コメント

No title

はいでぃほー。

レキシの曲、初めて聴いた(と思う)んですけどこんな感じなんですね。CMの目玉のおやじの着ぐるみカワイイ!笑
ゲゲゲの鬼太郎だから下駄の音→GET A NOTEって連想ゲームみたい。
弁慶と牛若丸…あっ、だから「レキシ」なの?って思いました。(違ったらごめんなさい)

ではでは、また!

Re: No title

 hanacoさん、はいでぃほー。

 僕もレキシにはあんまり詳しくないのですが、日本の歴史を題材にしたちょっと面白いけど何故か感動するタイプの曲を作る人達のようです。
 目玉のおやじ可愛いですね。hanacoさんの好きなモノアイですしね!(日本風すぎるけどw)
 そういえばゲゲゲの鬼太郎のタイアップでしたね……鬼太郎も下駄はいてました! そこは気づかなかったなあ。
 弁慶と牛若でレキシで合ってるはずです。名推理です。何年か前に流行った「狩りから稲作へ」という曲も凄く良いので、おすすめです。

コメントありがとうございました!
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