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大人力と子供力

大変面白い日記です。
つづきからどうぞよろしく。
 ことの始まりはとある夜勤であった。
 その日の相棒は、長老。
 長老という名が表すように、僕の務める部署で最年長の彼は、年の功をいかんなく発揮し、様々な体験を語ってくれる。
「俺はさあ伏田さん」
「はいはい、なんですか」
「俺さあ、くっだらねえ性犯罪のニュース、大好きなんだよね」
 長老、さすがです。
 そのぶっちゃけ方、真似できないです……!

 夜勤には必ず暇な時間が出来る。
 その時間を利用して長老と僕は夜飯を食べに行くことにした。
 長老行きつけの中華料理屋が会社の近くにあるのだという。
 僕も会社近辺は結構歩いたほうだと思うが、流石に勤務年数が長い長老は色々なところに足を伸ばしていた。
 その中華料理屋は薄暗い路地の奥の、ぱっと見では何もなさそうな所にあった。
 深夜二時まで営業しているらしく、夜勤時には大層使い勝手が良さそうであった。素晴らしい。
 中に入ってラーメン(ぼくは四川ラーメンとかいう不思議なラーメンを選んだ)を頼んで、物が出てくるまでの間、少し話した。
「最近なんか面白いとこ行った?」
 と長老が煙草をぷかぷかふかしながら言う。
「いやあ全然っすねえ、なんか僕もう、あらかた行き尽くした気がするんですよ。どこもかしこも行っちゃったなあ……って感じで」
 とまあ、僕も年上の長老には割と相談のようなことを話せる。
 そういう懐の深さが彼にはある。色々な経験をしてきた人特有の丸さがある。
「まあそういう時期ってあるよな……じゃあさあ伏田さん、能楽って行ったことある?」
 渋すぎるだろ!
 聞いたことはあるが、そもそもそんな所に行こうと考えたことすらない。東京に能楽が見れる場所があるのかどうか、調べたことすらない。ちゃけば興味もなかった。興味を持っていなかったことが既に僕の底の浅さを示しているようだった。そんなことに、言われてから気がついた。僕の世界のあまりに狭いこと! 思わず赤面してしまうくらい、僕は世間知らずで、何も体験していない、どこにでもいる若造だ。ちょっと歳を食ったくらいで、人並みに色々やったつもりになっていた。なんたる阿呆! 僕はもっと貪欲に遊ばなければならないのだ。たくさん色々な経験をしたら、それこそが我が文章の糧となり、根拠となるであろう!
 なれ! なってほしい! 願望だよ!

 四川ラーメンという緑色のラーメンがきた。
 パクチーの味しかしなかった。最初から最後までパクチーの草っぽい味しかしなかった。
 すごく美味いとは決して言えないが、面白い物を食べられて良かった。

 という長老の話が頭に残っていた僕は、休日に、どこか目新しいところに行こうと考えた。
 その結果、新宿のPIT INNとDUGに行くことにした。
 PIT INN は新宿の三丁目の方にあるJAZZ BARである。バー? クラブ? ジャズ専門のライブハウスと言った方がわかりやすいかもしれない。
 雑居ビルの地下にあるそのJAZZ BARはとても有名で、様々なアーティストがアダルティーでジャジーなミュージックを奏でては都会の喧騒から離れて思い出のスコッチのグラスの氷がからりと音を立てその時気怠げなアルトサックスがまた新しい夜に歩き出す――それほど大きな箱ではないのだけれど、綺麗で、椅子が並べてあって、煙草も吸えて、居心地がいい場所だ。
 だが、やはりはじめての場所というのは緊張するもので――しかも聞き慣れないジャンルが専門の場所だったので――結構不安だったのだが、開場十分前から待っていたら人の良さそうなおじさんおばさんばかり5,6人集まってきて、それほどマニアックというわけでもなさそうで安心した。
 バーカウンターでジントニックをもらって後ろの方の席に座ったら、僕の後ろの方で誰かが話しはじめた。静かな空間だったので話声が聞こえてしまったのだが、どうも年配の音楽関係者だったらしく、耳が遠くなっちまったよ……みたいな話をしていて、いいなと思った。そういうしみじみしたものに最近、心惹かれる。落ち着く。どんどんおじいちゃんになって来た気がすんだよね。まだギリギリ若いって言われる年齢だとは思うんけど、僕。心枯れる夏。
 居心地がよい、とは書いたけれど、入ったばかりの時は流石にどきどきしてそわそわしていた。で、そわそわしながらジントニックを飲んでいたら照明が落ちて、ぱらぱらとステージに人が上がって曲がすぐに始まった。
「えっ!?」と思った。
 始まり方があまりにも素早く、自然だったので驚いた。
 なんというか、客席の人が勝手にステージに上ってそのまま演奏しはじめるみたいな感じだった。とても不思議だ。
 休憩までMCもない。曲に込めた思いとかも話さない。一切喋りがない。
 休憩の時間になった時に、バンドマスターであろうおじいちゃんが、
「これから少し休みます。お騒がせしてすみません」と言って照明が明るくなった。

 お騒がせしてすみませんって、かっこ良すぎるんだけど!!!!!!!!!!!!!!

 ロックのライブには行ったことがあるが、こんな雰囲気にはならなかった。
 文化の違いを感じて楽しかった。

 主役はドラムのおじいちゃん、リズムと低音を支えるのがベースの眼鏡のおじさんで、和音と高音を担当するのがピアノのおねえさん。この編成がジャズの中でどのような立ち位置なのかよく分からないし、正直曲も全然聞いたことがないものばかりだったけれど、とにかくインプロヴィゼイションしまくってる感じはよくわかった。最後におじいちゃんが少しだけ「ダダダーレインボーダダダダー」みたいな歌を唄った。僕は泣きそうになった。上手いとか上手くないとかを超越して、その優しげな歌声がひらすらにキュートであった。
 ジントニックをおかわりして最後まで演奏を見たあと、僕はもう少しジャズ文化に触れていたくてDUGに向かった。

 DUGは村上春樹さんの小説に登場するJAZZ喫茶・バーである。
 きっとここも大層渋いんだろうと思った。
 地下に向かうチラシだらけの暗い階段を下りて行ったら、ほとんどの席が埋まっていた。
 笑い声と話し声が店の中に響いていた。
 しかもカップルがいて、バーテンは金髪の男の子、ウェイトレスも元気な女の子である。
 イメージと全然違って、JAZZはかかっているが、渋くはなかった。
 場違いな所にきてしまったなあと思って冷や汗をかいた。
 僕は一人客だ。
 周りはみんな二三人で来て大声で話したり笑ったりしている連中ばかりである。
 やばい。僕だけだ渋いの……と思っていたら、自分がひどく間抜けに思えてきたので、
「ハッハッハー、毒くらわば皿まで」とすぐに覚悟を決めて、マティーニを注文した。

 マティーニ……それはカクテルの王様である。一杯1200円くらい。
 眼の前に三角のカクテル・グラスをおっ立てながら男一人でカウンターに座ってみなさい?
 ほんとに根性試されるぜ!
「やってる感」が半端ない。
 もうちょっとで「今夜は騒がしいな……」とかつぶやくところだった。
 マティーニを一気飲みしてさっさと店を出た。
 DUGはちょっと一人では無理だなと思った。

 JAZZに触れた僕は、大人力が2くらいは上がったんじゃないかなと思う。
 少し酔っ払って家に帰ったら、家の者がHUNTERXHUNTERのアニメを見ていた。
 なんとなく飯を食べながら見ていたら止まらなくなった。
 なんだあのアニメは、面白すぎる! だから見たくなかったんだ! と思いながら見続けた。面白すぎる話っていうのはとても危険なのだ。生活が破壊される恐れがある。とくに僕はハマると止まらない病気なので、時間がたくさんある時でないと、見てはいけないと思う。
 結局姉二人と僕で、12時間ほどHUNTERXHUNTERを見続けた。
 グリードアイランドに入った直後から、キメラアント編の途中までだ。カイトがゾンビみたいになってしまうところ。漫画ではグリードアイランドの入り口くらいまでしか読んでなかったので、これが僕の中のHUNTERXHUNTERの最新話だ。
 HUNTERXHUNTERを見て思うのは、「特殊能力」の発想の良さと(というか無限に面白い特殊能力が湧いてくるんじゃないかってくらい能力がたくさんある)、キャラデザの多彩さと深さと、伏線の妙と、各種設定の凝りに凝った感じの凄さだ。
 簡単に言うと全部すごい。
 HUNTERXHUNTER芸人をこないだ見たので、キメラアントの王がどういう死に方をするのか分かってしまっているのだが、あれは明らかに泣くシーンなので楽しみだったんだけど、そこにたどり着くまでにめちゃめちゃエピソードがあるってわかって、逆にすごいなと思った。
 キャラの能力ってほんとに難しくて、僕はこないだ変なヒーローものの小説を書いた時に、ちょっと真剣に特殊能力を考えたことがあったが、全然出て来なかった。出てきても、既存のアイデアと被っていた。ジャンプコミックにしてもアメコミにしても特殊能力って凄く大事な要素なので、その勉強にもなったなあと思う。
 僕がほしい能力って何かあるかなって考えると、やっぱりビスケの桃色吐息(ピアノマッサージ)ですよ! 三十分のマッサージでめちゃくちゃ体が回復するという……。これがあれば全然寝なくて済むじゃないか……! 最高じゃないか……! アニメを死ぬほどみられるぜ!! 
 大人力が1下がって、今度は子供力が1上がるのであった。
 たぶんこのようにして僕は、バランスを取りながら、様々な経験をしてゆくのであろう。



 ということで今日は以上。
 最後まで読んでくれてありがとう!
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Author:伏田竜一
かわいい物とかっこいい物が好き。
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