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もっとも簡単マン

 創作をする人の心の中には、あるいは頭の中には、もっとも簡単でシンプルな物語構造があるはずだ。
 それは、その人の創作の基礎なのではないか。
 と、何の根拠もなく思いついたので、自分自身で試してみようというお話です。

 一番シンプルなお話を書いてください、と言われたら、あなたは何を書くだろうか?
 僕はたぶん◯◯マンだと思う。
 どこにでもある勧善懲悪モノで、僕が生まれる前から今に至るまでずっとずっと作り続けられている伝統的な物語パターンだ。

・まず悪がいて、悪いことをする。
・悪によって困らされている人がいる。
・◯◯マンが登場して助ける。
・悪は一時的に逃げ出して、◯◯マンも去る。
・正義は勝つが、悪は滅びない。

 ほんとによくある話だ。
 昔話から特撮物にアニメマンガ、ハリウッドアクションだってこのシナリオだ。
 でもこれ、実際に書いたことはない。
 これは僕にとって基本的な物語パターンのはずなのに、どうして書かないんだろうか?
 よく分からないが「小説」にはこのパターンがあまり無いからなのか?
 本棚を眺め回してみたが、どうも明確な◯◯マンパターンがみつからない。
 本格ミステリは本質的に◯◯マンパターンに近い気がするが、違うと言えば違う。
 ラノベにはこのパターンがちょっとあると思うが、一般文芸にはあまりこのパターンが見当たらない。何故か分からないので、ちょっと実際に書いてみよう。



『きのこ少年菌糸マン』

 ある所に貧しい夫婦があった。
 二人は貧しさから都で犯罪を犯し、山に逃げ延びた。
 野人同然の暮らしは大変に苦しかったが、ある日二人の間に赤ん坊が生まれた。
 赤ん坊の体にはしいたけが生えており、大変醜かった。
 夫婦は自分たちの罪のせいで鬼のような赤ん坊が生まれたのだと言ってそれを恐れ、山に捨ててしまった。
 捨てられた赤ん坊は地面から養分を吸収してすくすくと成長した。
 体から生えてくるキノコが赤ん坊が生きるための全てのエネルギーをまかなった。
 やがて赤ん坊は少年となり、山を歩き回るようになった。
 狩人がきのこ少年の姿をみつけ、その恐ろしい姿に驚き、矢を射った。
 矢はきのこ少年の脇腹に刺さった。きのこ少年は胞子を撒き散らして苦しんだ。様子を見に来た狩人は毒の胞子を吸って死んでしまった。きのこ少年は狩人の養分を吸った。人間には養分が多かった。きのこ少年はまた人間が来たら養分を吸おうと思った。
 次にやってきたのは痩せこけた少女だった。
 きのこ少年は身構えたが、少女は襲ってくる気配がなかった。それどころか根につまづいて転んだり、太い幹にぶつかったり、たいそう危なっかしかった。
 少女は生まれつき目が見えなかった。都で働き口がなかった少女は、食い扶持減らしのために山に捨てられてしまったのだった。
 少女は盲目だったのできのこ少年の姿に怯えることもなかった。
 きのこ少年は少女から言葉を教わり、都がどういうところかを聞き、人間のことを知っていった。二人は力を合わせて生活をし始めた。
 ある日、耳の良い少女が大勢の人間の足音を聞きつけた。きのこ少年と少女の生活が、都のものの耳に入り、山狩りが始まったのだ。
 二人は手を取り合って逃げ出したが、盲目の少女は上手く逃げることができずにつかまってしまった。きのこ少年は矢傷を受け、人の立ち入らぬ深い森の奥に逃げて傷の回復を待った。
 少女の助けを求める声がいつまでも頭の中に響いていた。
 きのこ少年は人間に復讐を誓った。
 傷が回復したきのこ少年は、両手に木の棒を持って里へ下りた。
 怪物の姿を見た都の住人は混乱を極めた。
 きのこ少年は自らを木の棒で激しく打ちながら都を疾駆した。叩くたびに体から毒の胞子が飛び散って都の住人たちは次々に死んでいった。きのこ少年は少女の名を呼んだ。だが返事はなかった。
 きのこ少年がひときわ大きな建物の地下で少女をみつけた時、少女は変わり果てた姿になっていた。きのこ少年は死んだ少女を抱きかかえ山に戻った。都には色とりどりの毒きのこが生えた。身動きをとるものは一人もいなかった。
 山に戻ったきのこ少年は少女を抱きしめたまま動かなかった。悲しみのあまり心が死んだようになってしまったのだった。
 一体幾日が過ぎただろうか、きのこ少年は少女の体にきのこが生えていることに気がついた。死んでいた少女の体に寄生したきのこは地面から養分を吸い取った。やがてきのこ少女は目を開けた。光を失っていた目が、きのこの菌糸によって機能を取り戻した。
 きのこ少年ときのこ少女は抱きしめあったまま巨大なきのこになった。二人の足元から伸びた菌糸は山の奥深くまで伸び、やがて山全体を覆うほどの巨大な一体のきのこになったそうだ。

おわり



 書いてみた。狙っていた話と全然違うことになったぞ。
 ◯◯マンというか、悲しい恋の話しみたいだ。
 あとオチがふわっとしてて自分で笑った。
 きのこ少年の武器が「自分を棒で叩く」というところも何かすごいヒステリーっぽくて自爆テロで笑った。
 今日は上手く書けなかったけど、次に書く機会があればもっと現代風の◯◯マンを書いてみたい。
 そうそう、悪はもっと個人がいいはずだ。都の人間、とか抽象的なものじゃなくて、ドクターワイリーみたいなやつだ。
 何はともあれ面白かったです。

 最後まで読んでくれてありがとうございました!
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Comments 2

There are no comments yet.
hanaco  
No title

はいでぃほー。

○○マンって聞くとヒーローのイメージですけど、菌糸マンはダークヒーローですね。
一般の人類サイドからしたら脅威だから、どっちかというとアンチヒーローになるのかな?(この辺の違いがよくわかってない)
書き方もあって、歴史ある大木とか大岩にまつわる神話?みたいな感じもしました。
どっかの山にあるでっかいキノコの前にこのお話が書かれた看板が立ててあって、最後に「※由来は諸説あります」とかあったらめっちゃそれっぽい!笑
それにしても諸悪の根源になった夫婦、どーしようもないな…キノコの肥料にしてしまおう!

なんだか小さい頃に読んで貰った昔話みたいで面白かったです。

それから、贈って貰った本のことですけど、こんなに早く届くとは思ってなくて、不在票が入っててびっくりしました。明日受け取りたいと思います。
ありがとう!いやぁぁ楽しみー!!

ではでは、また!

2018/06/17 (Sun) 01:17 | EDIT | REPLY |   
伏田竜一  
Re: No title

hanacoさん、はいでぃほー!

たしかに、全然普通のヒーローじゃなかったですねw もっと正義の味方にする予定だったのですが、キノコを題材にしたら内容が一気にじめじめしちゃいました。
少女の味方でしかないこの主人公は、なんだか悪そのものに思えてきました。

神話の雰囲気を読み取るとは……流石です。内容に反映されていないですが、これは中国の昔話だなあと何故か考えていました。
きのこ少年の伝説! 御神木というか、後神キノコが祀られているんですね!w お土産屋に並ぶ怪しいしいたけが見えます。
コメント頂いてから気づいたんですが、最初の夫婦、ほんとにどーしようもなかったw そこのところは全く気にしないで書いたんですが、最初から最後までダメな人達で笑いました。

楽しんで頂けて何よりです。嬉しいです。

もう受けとられましたかな。
なんと言いますか、あとは桜庭一樹さんがいい仕事をしてくれたら、僕の悔いは無いです!w

コメントありがとうございました!

2018/06/18 (Mon) 00:00 | EDIT | REPLY |   

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