お通し

 夏の日だとして。
 空に入道雲、の向こうの真っ青な空、どこまでも広がっている。遮られることなく。迫ってくるような巨大な太陽、光の塊。宇宙人もどこかにいるんだと思えるような宇宙のことなど思考してしまうような偉大な。
「何をお考えになって?」
 と先輩は言う。
 そのオーソドックスな言葉に少し混乱していた僕は表情と思考を固める。ふやけていたので。よくあることだ。
「戒めについてです。今生の設定について、というべきか」
「あら、異な事おっしゃられる。ふふふ……それがお好きならどうぞお続けになって」
「まさか好きというわけではないけれども」
 と俺は思わず突き出た反発様の口調を改めようと「失礼」と述べ、頭をわずかに振って胡瓜のことなぞを浮かべてみる。
「ただ……考えざるを得なかったのです。囚われているのだ、俺は」
「アハ、アハ、アハ……大仰ですこと。人類とはもっと自由なものだと聞きましたよ」
「誰に聞いたか知りませんが、そいつは嘘つきです」
 やはり拗ねたような口調の修正が間に合わなかった莫迦な口を縫ってしまいたい。
「嘘も方便だそうです。神は信じる者だけをお救いになられるのだとか」
 先輩はほがらかに詐欺のようなことを奏でている。
「信じているのですか、自由などというものを」
「いいえ、そんなの生ぬるいわ」
 先輩は空に向かって言った。
「わたくしは真実いつでも自由なの」
 そうかこの人は、信じたいなぞと露とも思わず、心から確信しているのだ。
 己の自由を。
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