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金夜文芸部 4話

 大切にしてきたものをあっけなく踏みにじられた時、はじめて人間は「絶望」という気持ちを知るんだと思う。
「もうやめましょう。何もかも無駄よ、こんなの」
 女はつまらなそうな顔でため息をついた。
 怒りのあまり胃の腑が焼けるかと思う。
「うるさいうるさいうるさいッ! レバーを握れ、まだ終わってない!」
「そんなにゲームがしたいならひとりでやればいいじゃない」
 興味が無いと言わんばかりの態度に、あたしは泣きそうになる。
 もう自分がどんな気持ちでいればいいのかすら分からなくなりつつある。
 コレなら誰にも負けないと思っていた。実際あたしに勝ったやつなんてほとんどいないし、あたしを倒した全ての人間を返り討ちにしてきた。
「……あんたを倒すまで、絶対にあたしはやめないッ!」
 振り絞るように叫ぶと、女は心の底からつまらないものを見る目であたしを見た。
「あなたは、絶対に私には勝てないわ」
 だって、私はもうあなたとゲームしないもの。
 そう言って女はゲームセンターから消える。
 あたしは、絶望を知った。

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11月のまとめと12月の目標

 早い。圧倒的な速度でもう今年が終わろうとしている。
 この一年、思い返してみるといろいろなことがあった。
 出来たこともあるし、出来ないこともあった。
 出来ないことの方が確かに多かったし、そのことで(今までと同じように)ちょっと焦る気持ちもある。
 でも今のところ、あんまり後悔はしていない。
 良いことも悪いこともあった。
 力不足も痛いほど感じたし、それでもありがとうと言われるとき、少しくらいは、ほんのちょっとくらいは、僕のような者でも、誰かの役に立ったのかもしれないと思えた。
 ぼかぁ、そうやって少しだけ、誰かのためになるようなことができればいいなと思う。
 贖罪でも意識高いでも承認欲求でもなく、そっちの方が楽しいからだ。
 好きだとか、楽しいだとか、そういう原始的な感情には、嘘がない。
 僕の中の爬虫類の脳がそう言っている。

 なんか真面目なことを書いてしまった。
 続きから本文です。

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金夜文芸部 3話

『幻の初期メンバーを集めるってクエストらしい』
『また厄介なことを。まあ気持ちはわからないでもないけど』
『みんなでやりたいって、叶原もそう思う?』
『いいえ。まったく』
『言い訳の余地もないくらいストレートだ……』
『みんなでワイワイなんて私はごめんよ。まったく魅力を感じない。部活に顔を出さない人にはそれなりの理由があるはずだから、無理やり引っ張ってきたって迷惑に決まってる』
『でも気持ちは分かるの?』
『理解できることと、そうしたいと望むこととは全く別の概念よ』
『それは理解してると言えるのかなあ』
『運動は健康に良い……それは理解できる。けれど運動はしない。そういうこと』
『うーん、怠惰?』
『怠惰とは真逆よ。むしろ強い意志。私は絶対に運動なんかしない。たとえ健康に悪くても、運動をしない人生を選び続ける』
『決意』
『そう言ってもいいわね』
『ちなみに、なんでそんなに運動嫌いなんだっけ?』
『え? 疲れるじゃない』
『それを怠惰って言うんだよ』

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金夜文芸部 2話

 地元の町を離れ、少しだけ遠い金高を受けた。
 僕の手の届きそうな高校の中で、一番レベルの高そうな高校を受けただけだ。
 県外に出る予定もなかったし、そんなこと本当は考えついてさえいなかった。
 親に薦められたし、教師にも薦められた。あなたなら金高にいけるよと、まるでこの高校に何か価値があるかのような言い回しで、厄介事を早く片付けてしまいたいとでも言いたげな手回しのよさで、良い子だけれど夢も希望もなかった僕は、大人たちが適当に決めたレールに乗ることにしたのだった。
 僕の母校の中学から金夜を受けたのはたったの6人で、その内5人は無事に入学できた。
 後の一人は、隣の県のとてつもなく頭の良い高校に入学した。金高なんて比較にならないくらいガリ勉の高校だ。競ってもいないのに、僕は何故か負けた気がした。学力なんかではなく、将来を見据える力とでも言うのか、そういった才能が僕には徹底的に欠如しているように感じた。
 友達もなく、やりたいこともなかった僕は金高という中途半端なステータスに重荷を感じ、暇を持て余していた。
 夏休みの直前に、ほこりにまみれた図書館で本を読んでいた時、誰かが大きな足跡を立てて入ってきた。
「キミ、名前はなんというのかね!? 一人で読書とは大した反骨精神だ。どうだね、もしキミがそうしたいと言うのであればだが……世界を変えてみないか?」
 見知らぬ先輩は、自信満々にニヤリと笑ってみせる。
 うさんくさい先輩に、ほいほいついて行ってしまうくらいには高校生活に愛想が尽きていたし、何より退屈していた。

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